#1 ある親友と幼馴染の話
- 紅屋 翠
- 2021年12月25日
- 読了時間: 2分
「僕のこと、覚えてる?」
……あのね、覚えてなくてもいいよ。
久しぶりに会う君は「僕が知っている君」とは随分変わっていて、
僕を一目見るなり、不安そうな声で「こんにちは」なんて言うから。
初めは酷く哀しくて、喪失感と怒りに押し潰されそうにもなったけど。
それでも君が生きていたことの方が、やっぱり何よりも嬉しくて。
だから、
君が僕を忘れてしまったことなんて、きっと些細なものだ。
きっと。
きっとね。
そんな君の
▶︎ [赤い瞳に] [青い瞳に]
映る僕の顔は怖いくらいに穏やかで、
“他人”を映す瞳の色はこんなにも虚しいのだと初めて知った。
でも大丈夫だよ。
覚えてなくても、いいよ。
君に「初めまして」と言われるのは、
▶︎ [今日で3度目だ。] [今日が初めてだ。]
また、“初めから”やり直そう。
ねえ、ユリくん。
おれのこと、覚えてる?
あのね、“覚えてなくて”、いいよ。
思い出さなくていいよ。
……どうか、何も思い出さないで。